心が柔らかいうちに、回復力があるうちに。

18歳。巣立ちの年。

カナエールに参加を決める多くの子どもたちは、高校3年生、もしくは、大学・専門学校などの1年生、年齢で言うと18歳前後にあたります。親を頼れない子どもたちは、18歳になると施設を出て、自分の力で社会で生きていなければなりません。

子どもたちの進学率が23%、全国平均の1/3以下であるということは、多くの子どもたちが、高校を卒業して就労を選んでおり、進学を選ぶ子どもはまだ少ない、ということを示していると考えられます。施設から進学を選ぶ子どもたちが少ないということは、似た境遇の身近な人に進学を選んでいる人が少ないということで、であるからこそ、カナエールは奨学金支援プログラムとして、社会人ボランティアとの120日間と、スピーチコンテストの開催を通じて、後に続く子どもたちのロールモデルになるような子どもたちに社会に巣立っていってもらうことを目指して来ました。

120日間のプログラムでは、スピーチ作りの過程で、自分のこれまでの経験、過去とも向き合い、自分がこれから本当に何をやりたいのか、何を為したいのか、何に向かいたいのか、「夢」という言葉を通じて考えます。向き合いたくない、目を背けたいことがある。それは誰しにもあることだけれど、困難な状況をこれまでに乗り越えてきた子どもたちです。自分のこと、自分の夢を、1つ1つ言葉にして、それを支えてくれる人たちに伝えようとすることが、120日間の挑戦です。

進学をしても、学業とアルバイトを両立しながら、時間を工面し、学費や生活費を賄っていくのは簡単なことではありません。中退率が25%、全国平均の3倍であるということは、そのことを如実に物語っています。今年、カナエールは行政や民間の奨学金支援の充実を鑑み(参考資料:社会的養護の子どもたち向け奨学金一覧)最後の開催になります。このことで、より多くの子どもたちが進学を選択する可能性の道が拓けたとも言えます。一方で、進学先を卒業し、社会に出るに至るまでの道筋が険しい、ということ自体には、まだ変わりがありません。これからの課題です。

カナエールにはグランドカナエールというプログラムがあります。コンテスト開催後、奨学金給付と並行して、主にカナエールに社会人ボランティアとして関わったメンバーが中心となって、卒業までの見守り支援を行います。実際にFace to Faceの面談などを通じて、子どもたちの巣立ち後の、社会人として歩みを始めるまでに付き添います。

進学は子どもたちにとって、まだまだ挑戦。カナエールはその挑戦を応援するプログラムです。子どもたちに進学して社会に出るまでを「めいいっぱい」挑戦してもらうためのプログラムです。

機会の提供は、挑戦のきっかけ作り、でもあります。
進学が全てではないけれど、進学は子どもたちの可能性を伸長してくれる、そういうきっかけにできると思っています。

生活保護などからの社会復帰や自立支援に取り組んでいる仲間と話していると、高齢になってからの「再挑戦」はなかなか大変なこと、だからこそ若いうちにこそ、頑張る力を育む活動は応援したい、という声をかけてもらいます。

また、過去にプロジェクトに関わったボランティアメンバーは、子どもたちには知識や知恵を身につけて、自分のためのセーフティ・ネットを自分で作っていって欲しい、と語っていました。

失敗しても、やり直せる社会、が望ましい。でも現実はなかなかに厳しい。だから、失敗しても、やり直せる自分、というのを、心が柔らかいうちに、回復力があるうちに、支えてくれる仲間や見守ってくれる大人たちと一緒に作って、それをきちんと確かめること。

それが大事なんだと思います。

だからこそ、今、僕らができる、めいいっぱいの応援を。
観客席の皆さんの姿を舞台から目にすることが、子どもたちの未来の力になると信じています。