希望格差のない社会へ

昨年のカナエール 夢スピーチコンテストの会場で、一人の若ものがこんな夢を語ってくれました。

ご存知の方も多いと思いますが、山本美香さんというジャーナリストがいました。2012年8月20日、彼女はシリアで殺害されてしまいました。命の危険がある中で、それでも伝えたかった事とは、ジャーナリストとは何だろうとその時に初めて想いました。ジャーナリスト。その仕事は、真実を伝えることで時に世界を変える力があります。僕は命がけで人々の声を伝えていた山本さんに強い影響を受け、ジャーナリストを志すようになりました。

もう一つ、僕の夢に強い影響を与えているのは、幼い時からの経験です。僕は親との不適切な関わりにより、内臓出血をして死にかけました。施設でも施設内虐待に巻き込まれてしまいました。当時の僕は、ただ毎日に怯えていました。こんな僕だからこそ分かるんです。親からも社会からも裏切られてしまったような孤独感、誰も救ってくれないかもしれない失望感を。

将来、僕は人々が気づいていない現実を伝えたい。みんなが進学や修学旅行の話をしているのについていけないもどかしさ。あの孤独感、あの失望感。そんな経験をした僕だからこそ分かり、伝えられる事だ。僕は人々の声を、想いを伝え、みんなに分かって貰いたい。あなたの助けが必要だという事を。沢山の人々に希望を与えられるような、誰かに必要としてもらえるような、僕にしかなれないジャーナリストになる。これが僕の夢です。

児童養護施設で暮らす若ものは18歳で施設を出て、自立して生きていかなくてはなりません。「カナエール」は児童養護施設を退所した後、専門学校や大学等へ進学する若ものを支援する奨学金支援プログラムです。児童養護施設を退所する若者の進学率は20%(全国平均75%)、進学後の中退率は30%(全国平均10%)。親や家族を頼れない中、アルバイトで学費や生活費を稼ぎながら、卒業まで仕事と勉強を両立することは難しく、施設からの進学の前例も少ないがゆえに、進学を選べない若者が多くいます。

夢や進学への思いを語るスピーチコンテストの出場を条件に、返済不要の奨学金を給付します。120日間、スピーチコンテストに向けて3人の社会人ボランティアとのチームで取り組むことで、進学してからの「意欲」「資金」の両面をサポートすることを目的としています。2016年は東京・横浜・福岡の3会場にてスピーチコンテストが開催されます。

 

児童養護施設を退所した若ものの進路「希望」と「予測」

2015年、NPO法人ブリッジフォースマイルでは児童養護施設調査 2015として、全国の児童養護施設(601カ所)で暮らす高校生を対象に、社会的自立に向けた支援に関する調査を行いました(有効回答1,038人)。施設で暮らす高校1〜3年生に対して職業、進路について聞きました。全体では7割強が、高校3年生では79.4%が「将来つきたい職業がある」と回答しています。

進路について「希望」と「予測」について答えてもらった結果がa-1、a-2です。希望の進路と予測の進路の組み合わせを見ると、「希望」と「予測」で一貫して進学を希望した高校生は約26%に留まっています。さらに、希望では「進学」を選びながらも予測進路で「就職」または「わからない」を選んでいる人が10%いることは注目に値します。希望進路と予測進路が違う理由について、複数回答可として回答を求めました。各選択肢が選ばれた割合を見ると「お金」が55.9%、「自分の学力」39.5%、「迷っているから」29.6%となっています。

進路に対する気持ちや考えについて10項目を用意し、自分の考えに当てはまる程度について5段階評定回答を求めた結果がグラフbです。「よく考えて自分に合った進路を選びたい」に肯定的な回答が約90%と多く、「進路を決めるために情報を集めている」も5割を超え、多くの高校生が進路に対して積極的に考えていることが分かりました。「進路について相談できる人がいる」高校生が8割以上、「進路の参考にしたい先輩や大人がいる」高校生が5割以上いることから、進路選択について頼れる人がいる高校生も多いようです。一方で「進路は自分ひとりの力ではどうしようもない」が7割以上、「進学したいがお金のことが心配」も6割以上、さらに半数が「どのように進路を決めたら良いかわからない」とも回答したことから、進路に対する複雑な感情もうかがえます。

自分の希望する進路を選べる若ものはまだまだ多くありません。

 

「希望格差」とそれを埋める「意欲」と「資金」のサポート

施設を退所した若ものは18歳になり施設を出ると、自分で生きていかなくてはなりません。「学業と生活の両立が厳しい」「進学を選ぶ先輩が少ない」「進学を選んでも中退してしまうケースが多い」「社会に出ることに希望が持てない」。こうした「希望格差」を埋めるため、カナエールは「意欲」と「資金」の両面から若ものをサポートし、これからのロールモデルになるような若ものたちが社会に巣立っていくことを目指しています。

スピーチコンテストに挑戦する若ものは「カナエルンジャー」と呼ばれます。カナエルンジャーは120日間、3人の社会人ボランティアとともに、研修、合宿、スピーチトレーニングなどのプログラムを経て、コンテストに向けてスピーチ作りに臨みます。自分のこれまでの経験と真摯に向き合い、慣れない大人たちと時に真剣にぶつかり合い、120日間を経て強いチームが生まれます。スピーチ当日、たくさんの観衆に見守られ自分の夢を語り、それを応援してもらう経験は、その後の彼ら彼女らが進学し、社会へ巣立つまでの決意と自信になります。これが「意欲」のサポートです。

カナエールは返済義務のない「給付型奨学金」です。スピーチコンテストを成し遂げたカナエルンジャー全員に一時金を30万円、卒業までの奨学金を毎月3万円、給付します。月々の奨学金3万円は、アルバイト37.5時間分に相当します(時給800円の場合)。これは、睡眠、勉強、友達との時間を削ってアルバイトに励むカナエルンジャーへの時間のプレゼントです。これが「資金」のサポートです。

 

カナエールが考える自立

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自立とは人がひとりきりで生きていくことではありません。親を頼ることができない若ものが、頼れる大人や仲間と出会い、辛い時や苦しい時にその存在に助けられながら立っていられること。スピーチコンテストが終わっても、たくさんの大人や仲間が周囲に、隣に居続けること。そのことが希望に向かうカナエルンジャーを支える力になります。カナエルンジャーが夢に向って社会人としてスタートを切るその日まで、彼らを応援し続けます。スピーチコンテストはそれまでの長い道のりの門出の日なのです。

そして、カナエールを巣立ったカナエルンジャーが、その後に続く後輩たちの頼れる存在になります。東京10人、横浜8人、福岡6人のカナエルンジャーが2016年、スピーチコンテストに挑戦します。サポートできる人数は決して多いとは言えませんが、100人以上の大人たち、サポートしてくださる企業、団体、そしてご来場くださる1,000人以上のお客様を巻き込んで、スピーチコンテストは開催されます。身近な人が一歩も二歩も先を歩いてくれている、それはその後に続く後輩たちの希望に繋がります。この希望のためにカナエールは6年間、走り続けています。

 

カナエール横浜について

カナエール横浜は横浜市こども青少年局との共催となっています。プロジェクトを支えてくださる継続サポーターの皆さん、ご来場くださるコンテスト当日のお客様、企業スポンサー、加えて、横浜市のサポートを受けます。まだまだ、毎年順風満帆にコンテストが運営されているとは言いがたく、自治体と強い連携を持って開催されるカナエール横浜が継続的に開催されていくことには大きな意味があります。

児童養護施設を退所したカナエルンジャーが、当事者としてメッセージを発信することはとても難しいことです。それゆえに社会問題としてなかなかクローズアップされづらく、解決策が提示されて来なかったという状況もあります。スピーチコンテストはコンテストに来場いただくことでカナエルンジャーをサポートいただく「顔が見える支援」です。実際のカナエルンジャーの声を直に受け取って欲しい。きっと、来場いただく皆さんにも新しい気持ちが生まれるはずです。

カナエール横浜開催まで残すところあとわずかとなりました。カナエルンジャー、社会人ボランティア、実行委員会、一丸となってそれぞれの準備を進めています。是非、会場にお越しいただき、カナエルンジャーにエールを送ってください。昨年、一人のカナエルンジャーが語りました。

沢山の人々に希望を与えられるような、誰かに必要としてもらえるような、僕にしかなれないジャーナリストになる。これが僕の夢です。

今年もカナエルンジャーは自分たちの過去と向き合って、自分たちの未来を見据えて、自分たちの今を語ります。是非、会場へカナエルンジャーの夢を聴きに来てください。5,000円のチケット代が、プロジェクトのサポートになります。

満席の会場でカナエルンジャーのスピーチを迎えたい、それが私たちの願いです。

 

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