カナエール夢スピーチコンテストに参加して学んだ3つのこと

昨年、カナエールに来場いただいた観客の一人、東さんから、コンテストの感想を寄稿いただきました。初見でのカナエールへのとまどい、反動、そしてご自身の理解と問題点の咀嚼、カナエールの持つ可能性について、一つ一つかいつまんで書いていただきました。カナエルンジャーの気持ちやエンパワの気持ちが様々であるように、来場する観客の皆さんの気持ちも様々。人が人を支えるプロジェクトだからこそ、ある色々。是非、読んでいただきたいと思います。

東 宏樹(AZZIE)

◯自分の知らない世界に生きてきた人達との邂逅体験レポート

10ヶ月ほど前になりますが、昨年7月6日にカナエール 2014 夢スピーチコンテスト 横浜に観客として参加してきました。このイベントは何らかの理由で親の元ではなく施設で育った子どもたちが、大人になってひとり立ちするにあたり、自らの将来の夢を大勢の人びとの前で語ることで、進学のための資金を援助する、という取り組みのお披露目の場のようでした。

横浜では初開催ということで、日本大通り駅近くにある重要文化財の立派な建物に、緊張しつつ入りました。友人に薦められて来てはみたものの、カナエールってよく知らないし、児童養護施設って何だったっけ?という状態の私。右も左も分からないままスピーチを聞きにやって来たのでした。

入り口で手渡されたパンフレットを読んでみて、カナエールではNPOへの支援方法としてお金による援助(寄付)以外に、大きく2つの参加形態が選べるということを知りました。私のようにコンテスト来場者として5,000円払ってスピーチを聞くほか、1万円払って若者の支援者(エンパワチーム)として半年にわたって施設出身のスピーカー(カナエルンジャー)の準備を手伝う形でも参加できる、ということでした。

主催団体ブリッジフォースマイルの代表、林さんの開会スピーチでは、「社会的養護」といって家庭で暮らせない子供を社会で育てる児童養護施設というものがあること、そこでは18歳になると就職する子供が80%で、さらに進学してもお金がないのでアルバイトしながらの通学で3割が退学すること、希望格差が生じているということなどを学びました。

◯学び1:何らかの理由で親の元ではなく施設で育った子どもたちが、いる!

そのような境遇の人達がいるということは頭のどこかで分かっていましたが、実際にどういった人たちなのか、どれくらい多くいるのか、私はよく知りませんでした。それを実際に目の前で見て、彼らの話を聞くことが、極めて新鮮で、なおかつショッキングであったように記憶しています。

ただ、私はこの団体に対してよくわからないな、この支援のやり方は嫌いだな、と直感的に感じました。言葉にして明確に人に伝えられる形を持った夢だけが叶う、というところにある種の嫉妬心というか、逆差別のようなものが起こり得ないか?と感じました。。

◯学び2:カナエールのスピーチを聞くと、聞く側の自分が試される!

ある資格を取れば、ある学校に入学し卒業すれば、大企業に入社すれば、夢が叶う(あるいは叶ったことになる)とするならば、そのための資金援助なんて、私はするべきではないと思います。もっと未成熟な、青い、ぼんやりとした理想を、自分の境遇が苦しいままでも目指そうとする思いにこそ投資すべきです。将来的に苦しい境遇を再生産しなくなるための援助をしたい。援助が一見社会や個人を良くしているように見えても、それは根本的な問題を解決しないのではないか。そうではなくて、社会を変革していくために身を削って頑張る(既に頑張っている)人たちをこそ、全力で応援したい。そんなことを思いました。

とはいえ、私も社会奉仕活動をやっていた身として、あぁそういえばはじめは社会奉仕活動なんて、偽善的なイメージで、大嫌いだったなぁ、ということを思い出しました。「まず抱く嫌悪感はきっと同じ。だからこそ実際に聞きに行くべき。どんな問題も深く関われば、全く違った本質が見えてくるものなんだから。」頭をぐるぐる巡らせながら話を聞いていた気がします。簡単にいえば、輝かしいものを見た時の、激しい嫉妬と逆差別(被差別)の感情に支配されました。私は変でしょうか?2つ目の学びは、こういうことでした。

◯学び3:自分を守るための心の砦はそのまま自分を外に出す時の壁になる!

以前、愛着障害についての本を読んで、虐待やネグレクトで心を閉ざし、回避性愛着障害の人が大変な生き辛さを抱えていることを知っていました。彼らは(もしかしたら自分も)周囲に高い壁を築き、その中にいることで自分を守っているつもりでいるが、実際にはそこから出られなくなっています(壁が高ければ高いほど)。傷ついた心が生み出した恐怖の幻影に寄って、壁が乗り越えがたいものとなっています。これを解決するために、まさにその傷付けられるかもしれない、失敗するかもしれない、また嫌われるかもしれない、、という状況に敢えて挑戦することで、囚われた心の闇を克服して、回避を突破する、エクスポージャー(暴露療法)という方法があるそうです

そして何より興味深いのはマネージャー、メンター、クリエイターの3人一組で行うボランティアの支援者側(エンパワチームー)とその制度。カナエルンジャーを支えるエンパワチームは、カナエルンジャーの心の壁を乗り越えるところからはじめ、一緒に共通の目標に向かってお互いをエンカレッジ(勇気づけ)していく役割を持つ。カナエールのこの夢スピーチコンテストという仕組みは、顕在化している社会問題(社会的養護の希望格差)の解消を通じて、個人個人が心に抱える潜在的な社会問題(回避性愛着障害のようなもの)にもアプローチする、極めて効率的に社会を良くする抜群の仕組みだとも言えると思います。

会場でスタッフが、スピーチ中のカナエルンジャーに対して「素晴らしい」などカンペでメッセージを送っているのを見て、あぁ、このチームワークはすごいな、とスピーチ以外の部分でも感動したのは内緒です。

以下は、私がボロボロと目から鱗(と涙)を落としながら当日綴った、各ルンジャーについてのメモ書きです。

———メモ書きここから———

・るいみー (オレンジ 女子高生の格好をして出てきた八重歯の可愛い女の子)

私の夢「児童養護施設の職員になりたい」

子供の笑顔を増やしていきたいので、保育士の資格をとる

お母さんとはどんな存在か。母がいなくなったのでどんな存在かしらない

居るだけで甘えられる、そんな存在なんじゃないか

ずっと誰かのせいにして生きてきたけど、夢を持って変わった。

一人で寂しそうにしている女の子に声をかけてみた 「何して遊んでるの?一緒に遊ぼ?」

現在自分が昔居た施設でお願いをしてボランティアをしている

しっかり怒れる先生になりたいーそして母親のような存在になりたい

・アンジー (金)

私の夢「社会福祉士になりたい」

里親制度は18歳で終了

大学に進学できたのは里親のおかげ

一緒にこれからのことを考えてくれた

世の中は不公平

福祉の現場で仕事→行政で施設の子供の進学支援をしたい

「ここにいる方たちもみんな、自分の夢を持って、叶えてみてください」

・エマ (青)

木に登った少年

「みんながワクワクする場所を作りたい」

なりたい夢の仕事をしている人にインタビュー→社寺建築家、一級建築士

エマ「俺の気持ちなんか、あなたにはわからない!」

職員の人「お前の気持ちなんかわからない、でもわかろうとはする」

「自分の境遇をどう受け止めるかで今後の人生が変わる」

建築家というよりも、家族の居場所を作りたい

・五月=さっつん(紫)

保育士になりたい

里親としての父と母から愛情を受けて育った

小学校中学年に知った「自分が本当の娘ではない」「親の苗字と違っていたので不思議だった」

お父さん、お母さん、本当の娘のように育ててくれてありがとう

・エリック(黒)

児童養護施設こそが俺の居場所だ

風呂に入っている時に、ノリで夢を決めた←いいね!

好きなアーティストの話を聞きたい

育った場所が「一般家庭」か「施設」か。

施設で育ったことは、恥ずかしいことではない。俺は誇りに思っている。

施設で育ったことにかわいそうと思っている人に伝えたい

園だから仕方ない、ではない。

子供たちの居場所はここにある、そう言える職員になりたい

・ももちゃん(白)

保母(保育士)さんになりたい

たけのこを妹と裏山に取りに行っていました

施設で12年間過ごした。高校生のお姉さんが良くしてくれた

赤ちゃんは、人見知りで、びっくりしたから泣いただけ と教えてもらった

・きぐっちゃん(緑)

パワーの有る子だった

私はなんのために生きているのか、に答えるのが児童福祉士(私の夢)

母が再婚し「一緒に暮らさない?」と言ってくれた

再婚先の母の家に居づらかった「ここは自分の居場所じゃない」

施設に戻った時に言ってもらった「がんばったね」で辛さが吹き飛んだ

島崎さん

今度は私がこどもたちに「がんばってね」という

・アサッカー(イエロー)

保育士になって、ちびっこや子供を笑顔にしたい

立ち直れるきっかけと出会ったことがありますか?

父親の暴力にあい、玄関で寝ていた

児童相談所に行くことは、両親・家族との決別を意味する

児童相談所のトイレにいく時、子供の笑顔を見た

子供の笑顔を見て救われた。一緒に遊びたかった。

施設の決まりで「あそんではいけない」と言われた

キラキラの笑顔にできる保育士になろうと思った

資格をとるために2年間で200万円

勉強とアルバイト、施設での子供の援助を約束します

これからも、応援してください

・さゆりん(赤)

私の夢は歯科衛生士

自分を甘やかしてちゃダメだぞ。自分に厳しく生きなくちゃ

幼いころに両親が離婚し父親の仕事が忙しく児童養護施設に入所した

おじいちゃんが「おおさゆりー」と呼んでくれる

おじいちゃんが笑顔で自分の寂しさを満たしてくれた

「もし自分が結婚して子供が生まれたら、お金の心配をさせずに好きなことをして生きられるように」

どんな仕事があるか調べた

「家族と一緒にのんびり暮らしたい」が自分の夢

・りぃこ(ピンク)

客室乗務員に求められる資質は体力

やりがいはチームワーク

私には夢を語る資格はないと思っていました

施設に居たのはたった1年2ヶ月だけ

幼稚園の頃から母と姉(脳に障害がある)から暴力を受けていた

児童自立支援施設

コミュニケーションの授業は全て英語

18歳で夢が決まっているのはすごいこと

サヘルさん(審査員)のコメント

十人十色ってこういうことなんだろうなというくらい一人ひとりのカラーが良く出ていた

立ち止まるのではなく次のステップを考えて前を向く立派なオトナなんだと思う

家族を持って「おかえりなさい」「ただいま」をいう家庭を築いて欲しい

———メモ書きここまで———

最後にカナエルンジャーへメッセージカードを書く時間がありました。カナエルンジャーは楽しみにしていると聞いて、なるべくたくさん書いて送ったつもりです。

2014年からこれまでの審査に加え、観客投票も加わったということで、各個人の話をメモを取りながら聞いたのが活きました。誰に投票したかは読者の想像にお任せします。

以上、前半は隠れた情報が気になる天邪鬼な私が、夢を持てない施設の子(コンテストの会場にいない子)について考えすぎてしまい、明確な夢を持つことができれば、それが叶うのは必至なのだから、夢を明確に話せない側の人を支援したほうがいいんじゃないかと思って、斜に構えてしまった話でした。

後半はそれでも彼ら自身について感じたこと、カナエールの取り組みに感じる強烈な希望について書きました。

今年のカナエール2015は東京6月20日、横浜6月28日、福岡7月5日だそうです。皆様もぜひ、カラフルな未来を、スピーチを聞きに行きましょう!

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