カナエルンジャーを撮影すること

普段、カメラが好きでも、人の表情をたくさん撮る機会って、特別な場合を除いては、実はあんまりないんじゃないかと思います。カナエールというプログラムでは120日間の間、たくさんの人のたくさんの表情をたくさん撮ります。例えば、スピーチコンテストの当日だと、カメラマン2人態勢でリハーサルからコンテスト終了時まで撮影をすると、合わせて3,000枚くらいになります。

カナエール 夢スピーチコンテストの撮影に最初に呼ばれた時のこと。僕が担当するのはスチール撮影、映像ではなく静止画を撮る方ですね。当時は200人ほどの会場でしたが、先輩のカメラ担当の方がおり、いきなり現場だったので、色々教えてもらおうと聞き耳を立てていました。少しカメラの話をしているととても意外なことが。僕の相方のカメラマン、ゆきさんは趣味がオーロラの撮影で、アラスカや北欧に実際に趣き、氷点下の中、本格仕様のダウンジャケットを着込んで、顔を凍らせながら、何時間もかけてオーロラの撮影をします。すごい時は−50℃にもなるそうです!これからスピーチコンテストというものの撮影なのだよな、でも、この人の趣味はオーロラ撮影なのか、と思ったら、なんだか途方もなくて(わかりますか、この感覚)、随分気が楽になったことを覚えています。

僕はと言えば。趣味が料理と器でして、日常生活では自炊の写真撮るくらいなのですが、旅に出るのが好きで、風景の写真やら町並みの写真を足を動かしながら人の営みに目を配りながら撮るのが好きです。人の撮影をする機会、というのはそんなに多くなくて、プロのカメラマンでもない。そんな僕がなんでカナエールのカメラマンに声かけられたかというと、趣味でインタビューサイトをやっていて、今はカナエール東京・横浜の実行委員長のゆってぃに取材した際に撮った写真が、カナエールの事務局で話題で、あの人はどうやら撮れそうだ、ということで白羽の矢が立った、ということでした。まあ、お呼びが掛かったのがコンテストの2週間前だったので、どうしたものかと思いつつ、もともと観客の1人として行く予定だったので、撮影ができた方が面白いかもなと思って引き受けたのでした。

カナエルンジャーを撮影すること

皆さん、お気づきの通り、カナエールに出場する若ものたちのプライバシーの問題というのは非常にデリケートです。色々な経緯を持つ若ものがいて、使える写真もそうでない写真もあります。もしかしたら、カナエールのWebサイトにカナエルンジャーの写真が大きく出ているのを見て、良いのかな?と思った方もおられるかも知れません。このあたりはきちんと本人や周囲の方々のご理解を得た上で、可能な範囲でこのプロジェクトをよりよく皆さんに知っていただくために使うためのプロセスを踏んでいます。開始から終了まで、カナエールの会場にご来場される皆さんには撮影を禁止させていただいているのは、そういう意図があります。

とは言え、初めは、一眼のレンズを向けられるのに、気恥ずかしさもあるし、警戒心もあるし、照れもあるし。プロジェクトがスタートした時には硬さもあるし、レンズを向けられてると目をそらせてしまう子もいます。ただ、プロジェクトが進むにつれて、社会人ボランティアのチームと打ち解けて、カナエールというプロジェクトの場の空気に馴染んで、喜怒哀楽全てあれど、表情は豊かになっていく、そういうのを観察しながら撮って行きます。ワークに集中する真剣な眼差しには撮っているこちらも引き込まれるし、満面の笑みにこちらもカメラ越しにニヤリとしている時もあるし、あの子のいい顔は撮れたかな、なかなかあの子はカメラに気付くと警戒してしまうな、あの子がいい顔をする時はどういう時だろう、誰と話す時にあの子は一番表情が綻ぶのかな、そういうことを考えながら撮ります。

撮影者と場の距離

もう一つ、プロジェクトを撮影する上で大事なことがあります。カナエルンジャーや社会人ボランティアとの距離感です。とても近しい立場になって撮ることもできるだろうし、なるべく遠い立場から撮ることもできます。僕はどちらのタイプかと言うと、「自分がその場の登場人物にならない」ように意識して撮ることにしています。遠い立場から撮る。これはどちらが良いという話ではなく、ただ撮れる写真が明確に違います。近い立場の撮影者なら、カメラに向って微笑んでくれることもあるでしょう。遠い立場の撮影者なら、カメラが向けらている意識の外の笑顔を撮れることもあるでしょう。そんなことを考えながら撮ります。

コンテストの本番です。ゆきさんと僕は今まで3年間一緒にスピーチコンテストを撮影して来ました。特に会場が大きくなってからのコンテストの最中は明確に分業しています。僕は舞台表。ゆきさんは控室や舞台裏。僕の撮る写真はステージでカナエルンジャーやそれをサポートする人たちがどうだったかという記録。なので、全てのスピーチでいくつかの角度でなるべく全てのカナエルンジャーのスピーチをきちんと記録に撮れるように意識しながら、プログラムの進行に沿って撮影を進めます。一方、ゆきさんが撮る舞台裏や控室は、スピーチ前のひとしきりの歓談や、直前の緊張や、スピーチを終えての感動のわかち合いなど、実にさまざまなシーンがあります。2人が同じことをやるのではなく、それぞれが撮るべき写真を意識しながら、スピーチコンテストを終えて、カナエルンジャーや社会人ボランティア、そして当日をサポートした人たちの記録になるように、カメラマンという仕事をしています。

カナエール 2016 夢スピーチコンテストに向けて

今年、皆さんがWebサイトやソーシャルメディア、チラシを通じて目にしているのは主に昨年のカナエルンジャーです。それはだからバトンを引き継ぐように、前年の若ものの勇姿や笑顔や気概が、次の年のカナエールに向けて、しばしば皆さんの目にとまることになります。撮っている僕らも、カナエルンジャーと社会人ボランティアが心底喜べるような写真を撮ること、加えて、カナエールのこれからを色々な人たちに伝えるために必要な写真を撮ること、両方を意識しています。今年も良い写真を撮れれば良いなと思います。記録に残る写真であることと、次に繋がる写真であること、それが撮影の醍醐味かも知れませんね。

お気付きの通り、タイトル画像の素敵な笑顔を撮ったのは、舞台表の僕ではなく、舞台裏のゆきさんですw。

まずはカナエール横浜から、東京、福岡とカナエールは今年も3都市開催です。ご都合のつく会場に是非足を運んでください!よろしくお願いします!