私はひとりじゃない – 社会に出るその日まで

コンテストで夢を語った若者たち。それぞれにそれぞれの「その後」があります。 学校を卒業し、保育士として元気に活躍する、さちへのインタビューです。

このエントリーはアースガーデンの2015年6月22日付の記事を、サイトの承諾を得て引用しています。引用元の記事はこちら

育児放棄や、親からの虐待、そもそも両親がいないなどの理由で家庭で生活できなくなった子どもを守り育てる児童養護施設。そこに生活している子どもたちは全国に3万人以上います。子どもたちは18歳で施設を退所しますが、その後の進路における進学率は2割。全国平均7割に比べて大きな格差があるのです。また、せっかく進学しても3割もの子どもが卒業できずに中退。その割合は、全国平均の3倍にもなります。

どんな環境で生まれ育っても、教育や進学の機会は平等にある社会であってほしいと「資金=奨学金」と「意欲=応援」の両面からサポートするのが『カナエール』です。

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自分に自信が持てない傾向にある子ども達。
本番まで伴走するボランティアとチームを組み、120日間かけスピーチをつくりあげます。
自分自身と向き合いながら、夢への思いを強くしていきます。
大勢の観客の前でのスピーチという、大きなチャレンジを乗り越えること。
仲間の存在を感じることで、自己肯定感、進学と夢への意欲を高めます。
コンテストへの出場が、奨学金給付の条件です。

今回は実際にスピーチコンテンストに出場し、今は保育園の職員さんとして働くさちさんにお話を聞きました。

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アルバイト37.5時間分に相当する奨学金

「私はやりたいことも、進学も決めていました。保育士の養成学校に通って、児童養護施設の職員さんになりたかったんです。人と関わる、そして子どもを守る仕事をしたかったので。だから、児童養護施設にいたころから奨学金を探していて、そのときにカナエールを知りました。カナエールの助成金は他のものに比べてとても手厚いんです。普通は高くても総額で40万円ほど。でも、カナエールは、学校に通っている間は月に3万をもらえます。私は専門学校だったので3年間通って、108万円です。それに一時金として30万円。総額138万円です。」

まさしく桁が違いますが、この月3万円という金額は、時給800円のアルバイトに換算すると37.5時間分に相当します。児童養護施設出身の子どもたちの多くは、卒業と同時に自分が稼ぐお金で、毎日を生きなくてはなりません。普通の学生はから親から仕送りをもらいますが、彼女たちは多くの善意ある人から受け取ります。

「募集要項には、300人の前でスピーチしますって書いてあって、そんなのやれる自信はないけど、チームを組んですすめるって書いてあったし、自分ができなくても誰かが支えてくれるだろうし、やりたいことも決まっていたから文章考えるのも簡単だろうし、正直余裕だろうって思っていたんですけど、大変すぎでした(笑)」

さちさんは、施設を卒業した後、昼間は今働いている保育園でアルバイトしながら現場の経験を積み、夕方から学校に通うという生活を選びました。慣れない生活の中、スピーチコンテンストの準備を進めていくことになります。

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120日間のすれ違いと、努力と、本番

「朝は5:30におきて、保育園に行って仕事をします。夕方に終わると、学校に行って、家に着くのが20:30くらい。そこから下宿先のおじさんおばさんとご飯を食べ、寝る。下宿させてもらっているお家は親戚とかではないので今まで知らなかった人なんです。そんな生活に、まだ全然慣れてもいなかったし、その中でスピーチのことを考えて、エンパワさんと連絡して、全然手が回らないんです。どうしても、自分の仕事と学校で目いっぱいになってしまって。」

エンパワさんというのは、スピーチする子どもの相談役の大人のこと。エンパワ3人と本人の4人で、120日間かけてスピーチをつくり、発表します。その葛藤の様子をエンパワから見た記事を過去に書いておりますので、ご参考まで。

「エンパワさんはみんなボランティアさんなんです。仕事や生活があるのに、毎週のように会っていて、なんでみんなこんなに会いに来てくれるんだろうって思ってました。先週『原稿やだ!』って言ったのに、また今週も会ってくれる。自分が頑張れてないのに、エンパワさんのほうが頑張ってくれてる。この人たちはなんで、私たちのことを応援してくれているんだろうって、ずっとびっくりしていました。正直『なんでこんなに会いに来るんだよ!』とか『私だって遊びたいよ!』って思ってたんですけど、今は感謝しています。」

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大人の暑苦しい気持ちとは裏腹に(笑)子どもたちはこんなものでしょう。だって、18歳や19歳です。平日は朝から晩まで頑張ってる。土日くらいダラダラしたいし、友達や恋人と遊びたいし、エンパワさんは厳しいし、このすれ違いは大きいだろうと思います。

「私は始まった時から、本番の前日まで、ずっとモチベーションが低くて。とりあえずスピーチをすればいいんでしょ?って考えてんですけど、当日はなぜかすごくやる気が出て、自信がついちゃって。120日間、いろんな人に支えてもらって、それが当日、謎の自信につながったみたいです(笑)もちろん、手も膝も緊張で震えて噛みまくちゃったけど、気持ちは堂々と。」

120日間の葛藤の末、多くの人の前でのスピーチは、東京、横浜、福岡の3会場にて行われています。これは、本当に多くの人に来ていただきたいなぁと思っていて、ぼくも昨年はじめて参加させていただいて、今年も横浜の会場に行きます。言葉で表すと非常に陳腐ですが、元気をもらえるんです。子どもたちの真剣な言葉と眼差しを実際に見ると、自分もへたれている場合ではないと感じます。

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すでに開催された東京の様子。
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すでに開催された東京の様子。

ひとりじゃないと気づけた

「学校に3年間通うっていうのは、普通の人にとってはそんなに難しく無いと思うんですけど、私たちの様な親に頼れない環境にいる子どもにとってはかなりきついんです。自分で生活費をやりくりして、学費も払わなきゃいけないし、とにかく必要なお金はすべて自分でまかなわなければいけない。私は学費のために毎月6万5千円を貯金していましたし、保育園の収入はそんなに高くない。学費を払いつつ、貯金もしつつ、自分が遊ぶお金や交通費もあるし。それがけっこうキツくなちゃって全部苦しくて、学校やめようかなって思った時期もありました。学校やめれば、学費は払わなくていいですから。

でも、本当に辞めてしまえば、奨学金はもらえないし、逆にお金を返済しなくてはいけないんですね。それに何よりも、毎月もらえる3万円は、いろんな人が毎月支援してくれているおかげでもらえているんだと気づいて。そんな応援してくれている気持ちを裏切って辞めちゃだめだろうって。毎月もらえるお金は確かにお金だけど、特別なお金で、自分は応援されているし、ひとりじゃない。そんな風に思えるから、カナエールのスピーチをやって本当によかったです。」

さちさんは、現在、無事学校を卒業し、保育士として元気に活躍しています。さちさんの元気さは、きっといろんな人を元気にしているでしょう。辞めずに頑張ってくれてよかった。

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ひとりじゃないと気づけた時の強さというのは、大人の私たちもよく分かるところじゃないでしょうか。ひとりなら負けてしまうような時でも、応援してくれる人がいれば踏ん張れる。ライバルがいれば負けられない。その強さは苦しい時にこそ役に立つ。

奨学金だけじゃないし、スピーチだけじゃない。その2つで子どもたちをエンパワメントする「カナエール」のスピーチコンテンストをぜひ見に行ってみてください。

写真:加藤 康祐

夢スピーチコンテストのチケット代は奨学金に充てられます

ただし、横浜開催に限り横浜市との共催となっており、奨学金は横浜市社会福祉基金を原資とし、プロジェクトを継続的に運営していくための費用にチケット代は充てられます。児童養護施設等退所者向けアフターケア事業における奨学金支援事業として、昨年横浜市が全国の自治体に先駆けて行ったもので、3拠点で開催するカナエールの夢スピーチコンテストの中でも横浜のユニークな特徴となっています。

カナエールの120日間で培われたものは、コンテストを終えた若もの一人ひとりを支えます。さちのように、今年のカナエルンジャーたちにも、笑顔で120日間を振り返られる、コンテスト当日がそんな1日になれば良いなと思います。

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